建築家の方にとって、
設計する建築物というのは、ある意味作品です。
その後長い時間その場に佇む存在。
町並みとの調和はもとより、
設計者にとって誇るべきものであるべきでしょう。
その対象が公共物である場合、
その思想でまったく問題ありません。
しかし住宅となった場合、
それだけが価値観ではありません。
むしろ住む方がいる分、
設計者にとっての、作品という価値観は、
極限まで小さくするものだと、私は考えます。
家の価値とは何なのか。
それは快適に住むことです。
いくら街並みに調和していても、
見た人があっというようなアイデアで出来たものであっても、
テレビで紹介されてチヤホヤされようとも、
住むその住人が快適でなければ、
何の意味も持たないのです。
とある建築家のプランを、
セカンドオピニオンとしてコメントさせて頂きました。
プランを見せて頂いて、クオリティに感心させられました。
外観もそうですが、細部に視線に関する配慮があり、
まさに一般的な住宅会社では、こういう発想は出来ないだろうなと、
唸っていました。
ただ、そこに住む方が30代ならば、です。
実際にお住まいになられる方は、60代でした。
今はギリギリ大丈夫。
しかし10年経ったとしたら、
本当にこの家に住めるのか、そう感じさせる家でした。
非常にその建築家の方を評価されているお客様なので、
表現に気を付けながら伝えましたが、
やはりお客様自身も少し気になっていたようでした。
「これでお願いします」と言ってしまっていることに、
とても気を遣ってらっしゃいましたが、
再考頂くことを依頼するとおっしゃっていました。
実際に住むのは、お客様。
変なところに気を遣うべきではないんです。
むしろ業者側が、そんな気の遣わせ方をするべきではない。
マイホームの計画は、わがままでいいんです。
そのくらいで丁度いい。
それを受け止められる住宅会社でいましょうよ。
そういうことを笑って出来る会社を選びましょうよ。
出来た時にいい家ではなく、
住みつづけられる家を作る為に、
私は将来の可能性を伝えられる存在でありたいと願います。
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